v2 サンプル試作版 / 経済編 25「物価(インフレとデフレ)」(講義臨場感バージョン:先生の語り+生徒の疑問入り)
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第 3 部 / 経済編 / v2 サンプル

物価(インフレとデフレ)消費者物価指数/インフレーション/デフレーション

今日は 「物価」 の話をします。
100 円のハンバーガーが、ある日突然 200 円になったら——困りますよね。逆に 50 円になったら、嬉しい? いやいや、それも実は怖いことなんですよ。
なぜ物の値段が変わると私たちの生活が揺れるのか、その仕組みを インフレ・デフレ・スタグフレーション という 3 つのキーワードで読み解いていきましょう。

この講で説明できるようになるギモン

物価の動きが経済を左右する

100 円のハンバーガーが、ある日突然 200 円になったら——これが「インフレ」の分かりやすい例。
逆に 50 円になったら「デフレ」。

物の値段の動きはね、私たちの財布の中身だけでなく、国の経済全体 を大きく揺さぶるんです。だから物価の動きを正確に読むのは、経済を理解する上ですごく大事なスキルなんですよ。

生徒

物が安くなるなら、デフレって嬉しいことじゃないんですか?

先生

そう思いますよね。でも、それがそうでもないんです。物が安くなるってことは、企業の売上が減る ってこと。すると給料も減る、ボーナスも減る、最後はクビになる人も出てくる——みんな貧乏になっちゃうんですね。これを「デフレスパイラル」って言って、後で詳しく見ていきます。

物価のキー要素

インフレ・デフレ・スタグフレーション

  • 物価 モノの値段の平均値
  • CPI(消費者物価指数) 消費者が購入する財・サービスの価格変動を示す
  • インフレ(インフレーション) 物価が継続的に上昇する → 貨幣価値が下がる
  • デフレ(デフレーション) 物価が継続的に下降する → 貨幣価値が上がる
  • スタグフレーション 不景気なのにインフレが起こる

物価と物価指数

まずは 「物価」 という言葉。これは「モノの値段の平均値」のこと。1 つや 2 つの商品じゃなくて、世の中いろんなモノの値段を ぜんぶまとめた平均 ですね。

消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)
消費者が日常的に買っている財・サービスの価格変動を示すもの。
日本では インフレターゲット 2%(CPI が前年比 2% 上昇)を目標にしています。
企業物価指数(CGPI)
企業の間で取引される財・サービスの価格変動を示すもの。

物価指数:基準年の物価水準を 100 として、比較年の物価水準を指数で表したもの。

インフレーション(インフレ)

定義物価が継続的に上昇すること。好況のときによく起こります。
実態:物の値段が上がるっていうことは、お金の価値が下がる ってこと。だから、貯金や貸していたお金の価値も下がる = 借金返済は楽になる んですね。

生徒

なんでインフレだと借金返済が楽になるんですか?

先生

これね、考え方がちょっと面白いんです。たとえば、今 100 万円借りたとしますね。1 年後にインフレで物価が 2 倍になると、月給も大体 2 倍になります。すると、最初に借りた「100 万円」の価値は、今の感覚で 50 万円 くらいに目減りしているんですね。だから返すのが になる、ということ。

逆にお金を貸している人や、貯金を持っている人は、 をするんです。インフレは「借りてる人に有利、貸してる人に不利」と覚えておきましょう。

インフレの 2 つの原因

ディマンドプル・インフレの仕組み

  1. 需要が増える
  2. 品不足になる
  3. 値段が上がる

コストプッシュ・インフレの仕組み

  1. 原材料費 高騰
  2. 製造コスト増
  3. 商品の値段上昇
ディマンドプル・インフレ
需要が増加したことによるインフレ。品不足や通貨量の増加が原因。
コストプッシュ・インフレ
原材料費・輸入価格などのコスト上昇によるインフレ。

インフレの 3 段階(速度による分類)

クリーピングインフレーション
インフレ率 年間数% 程度(忍び寄るように少しずつ)
ギャロッピングインフレーション
インフレ率 年間 10% 程度(馬が走るように)
ハイパーインフレーション
インフレ率 毎月 50% 以上(1 年後の物価が 130 倍以上)。
例:第一次世界大戦後のドイツ/第二次世界大戦後の日本/21 世紀初頭のジンバブエ
生徒

ハイパーインフレって、生活はどうなるんですか?

先生

これがね、笑えないんですよ。第一次大戦後のドイツでは、パン 1 個が 1 兆マルク になったって記録があります。給料をもらってもすぐ買い物に走らないと、夕方には倍の値段になっている。リヤカーで札束を運んでもパンが買えない——そんな世界です。

だから日本銀行は 急なインフレを絶対に起こさない ように、ものすごく注意して金融政策をやっているんですね。

デフレーション(デフレ)とデフレスパイラル

定義物価が継続的に下降すること。不況のときに起きます。例:バブル崩壊後から現在までの日本。
実態:物が安くなる = お金の価値が上がる。だから貯金や貸していたお金の価値も上がる = 借金返済は苦しくなる
原因:モノが売れなくなって、企業が値下げを始めることが引き金。

デフレスパイラルの悪循環

デフレが深刻になると、こんな 負のループ が回り始めるんです。これがデフレが怖い理由ですね。

デフレスパイラル(抜け出せない悪循環)

  1. 物価下落
  2. 生産活動 低下
  3. 賃金 低下
  4. 失業者 増加
  5. 消費 減少
  6. さらに物価下落
生徒

このループ、どうやって抜け出すんですか?

先生

めちゃくちゃ難しいんですよ。日本はバブル崩壊から 30 年以上 もこのループに苦しんできた。これを「失われた 30 年」って呼ぶんですね。

抜け出す方法としては、政府が公共事業でお金を使ったり、日銀がお金の量を増やしたり——でも一発で効く魔法はありません。だから「景気は急に良くなりません」って先生が言うのは、これが理由なんです。

スタグフレーション

定義不景気なのにインフレが起こる という、ちょっと変わった現象。普通の経済学では「景気が悪い = 物価も下がる」はずなんですが、これは例外なんですね。

代表的な例
1973 年 第 1 次石油危機(オイルショック)
原因
不況であっても、品不足・輸入品高騰・原材料高騰 などが原因でインフレになることはある。

スタグフレーション」という言葉は、Stagnation(停滞)Inflation(インフレ) を合わせた造語なんですよ。

生徒

なんで不景気なのに物価が上がっちゃうんですか?

先生

これは外側から「原材料の値段だけ」が上がるケースですね。1973 年の 第 1 次石油危機 がいい例。アラブの産油国が「石油を売らないよ」とストップをかけて、世界中で石油の値段が 4 倍 になったんです。

すると、日本では景気は悪くなる(オイルショックで工場が止まる)のに、ガソリンや電気代だけ高い = スタグフレーション という、変な状態が起きてしまったんですね。

この講のおさえどころ

考えを深めるための論点

市来公平先生からの問い:「あなたはインフレとデフレ、どちらがいいと思いますか?その理由は?」

インフレが続くと物価が上がり続けるため、固定給で生活する人や年金生活者は実質的に生活が苦しくなります。 一方で、適度なインフレ(年 2% くらい)は経済活動を活発にし、企業の利益増加・投資促進につながる。 デフレは一見「物が安くなる」ため消費者に有利に見えるが、賃金も下落し、企業の倒産・失業増加をもたらす「デフレスパイラル」の危険があります。 日本はバブル崩壊後に長期のデフレを経験し、「失われた 30 年」とも呼ばれる経済停滞を経験しました。 現代の経済学では「適度なインフレが望ましい」(インフレターゲット 2%)とされていますが、急激なインフレはハイパーインフレの危険もある。 どちらが「いい」かは、立場や経済状況によって異なるんですね。