非公開試作版 / 政治編 09「平和主義」(解説書籍版プロトタイプ)

第 2 部 / 政治編 / 日本国憲法 第2章

平和主義 戦争放棄/戦力の不保持/自衛隊/砂川事件/非核三原則/自衛権

講義動画

出典:市来公平 先生/TR-013「平和主義」

この講で説明できるようになるギモン

平和主義は憲法第9条に書かれている

日本国憲法 第2章 第9条 は、戦争放棄戦力の不保持交戦権の否認 の3点を定めています。 ここから「自衛隊は戦力にあたるのか?」「日米安全保障条約は憲法違反ではないか?」といった、戦後日本の最も大きな憲法論争が生まれました。

第9条の3要素

日本国憲法 第9条

  • 戦争放棄
  • 戦力の不保持
  • 交戦権の否認

自衛隊に関する3つの裁判

「自衛隊は憲法第9条の 戦力にあたるのではないか?」が争点となった裁判が3つあります。

3つの裁判の共通点

長沼ナイキ事件
北海道の長沼でナイキ基地が問題に。第一審では「自衛隊は憲法違反」と判断されたが、最高裁は 憲法判断をしなかった統治行為論)。
恵庭事件
自衛隊基地への器物損壊事件。最高裁は 憲法判断をしなかった。統治行為論は使われず。
百里事件
自衛隊基地の建設をめぐる裁判。最高裁は 憲法判断をしなかった(統治行為論)。

共通点は 3つとも最高裁が「憲法違反だ/違反でない」と明言しなかった ことです。 長沼・百里では 統治行為論 が用いられました。 その結果、自衛隊が合憲か違憲かは「司法ではなく行政(内閣)が判断する」かたちになり、現在の政府見解は 「自衛隊は必要最小限の実力=戦力ではない」—— つまり憲法違反ではない、というものです。

砂川事件 ── 在日米軍と日米安保

日本に駐留する アメリカ軍も「戦力」にあたるのではないか? という争点で起きたのが 砂川事件 です。 最高裁は「米軍は 外国の戦力であり、日本が禁じている戦力(自国保有の戦力)の不保持には当たらない」として、 米軍駐留は憲法違反ではない明言しました。自衛隊裁判では明言しなかった最高裁が、米軍についてははっきり判断したのが特徴です。

ただし日米安全保障条約そのものについては、アメリカとの関係が絡むため 統治行為論 が用いられました。

入試では、自衛隊3裁判と砂川事件を 4択で混ぜて出題されることが多いので、 「米軍だけ最高裁が明言」「恵庭だけ統治行為論なし」のポイントを整理して覚えましょう。

日本の防衛原則

覚えておくべき防衛原則

専守防衛
先制攻撃はしない。攻撃を受けたときだけ防衛する。
シビリアンコントロール(文民統制)
自衛隊の最高指揮権は 内閣総理大臣 が持つ(防衛大臣ではない点に注意)。
非核三原則
核兵器を「作らず・持たず・持ち込ませず」。佐藤栄作が表明し、後にノーベル平和賞を受賞。
防衛装備移転三原則
旧「武器輸出三原則」の後継。紛争当事国などへの武器輸出を制限。
防衛費 GDP 比 1%
三木内閣が決定。中曽根内閣で枠を撤廃したが、その後も概ね 1% 前後で推移。2022 年以降、増額の議論が活発化。

個別的自衛権と集団的自衛権

2 種類の自衛権

個別的自衛権
自国が攻撃を受けたときに、自分でやり返す権利。
集団的自衛権
同盟国などが攻撃を受けたときに、自国が攻撃されていなくても 仲間として加勢する権利。

日本は長らく「集団的自衛権は憲法上行使できない」という解釈をとってきましたが、2014 年に解釈を変更し、 現在は個別的自衛権・集団的自衛権ともに「憲法上行使できる」立場にあります。

この講のおさえどころ

考えを深めるための論点

「自衛隊は憲法第9条の戦力にあたる/あたらない」をめぐる議論がいまも続くのはなぜでしょうか?

最大の理由は 最高裁が明確に判断していない ことです。 憲法の文言(戦力の不保持)と現実の自衛隊の存在の間に 解釈の余白 が残り、政府は「必要最小限の実力=戦力ではない」という立場をとっていますが、これは法解釈であって司法判断ではありません。 憲法改正の議論が起こるたびに 第9条が論点になるのは、この「解釈で運用してきた歴史」のためです。

集団的自衛権を行使できるようにしたことで、日本の安全保障はどう変わったといえるでしょうか?

同盟国(特にアメリカ)との連携が深まり、抑止力が高まる一方、日本が攻撃されていない場面でも戦闘に巻き込まれるリスク が生まれます。 「抑止力の強化」と「巻き込まれリスク」のどちらを重く見るかが評価の分かれ目です。