非公開試作版 / 政治編 08「国民主権」(解説書籍版プロトタイプ)

第 2 部 / 政治編 / 象徴天皇制・国民主権

国民主権 日本国憲法 第1章 / 国民が最終的に決める権利

講08 は3本の解説で構成されています

この講 08 章は PDF 上「象徴天皇制・国民主権」の単一章ですが、解説は天皇→天皇2→国民主権 の3本立てで構成されます。 このページは 3本目「国民主権」 です。

講義動画

出典:市来公平 先生/プレイリスト上のタイトル「国民主権」(6:38)

この講で説明できるようになるギモン

「最終的に決めるのは、誰?」

憲法第1章は「天皇」と「国民主権」を扱っています。 前の2本(天皇/天皇2)では、天皇が 象徴 であって政治的権力を持たないことを学びました。 では実際に「最終的に決める」のは誰なのか—— 答えが、この講で扱う 国民主権 です。

国民主権とは、国民が最終的に決める権利 を持っているという考え方です。 日本国憲法は前文と第1条で「主権は国民に存する」ことを明記しています。

国民主権を実現する4つの方法

国民主権

  • 選挙 代表者を選ぶ
  • 住民投票 地域のことを決める
  • 国民審査 最高裁判官の信任
  • 国民投票 憲法改正の最終判断

選挙 ── 代表者を選ぶ

代表者を選ぶ 選挙 は、もっとも身近な国民主権の行使です。 選挙権(投票する権利)は、2016年から満18歳以上 の人に与えられています。 これは「世界の9割の国が18歳までに選挙権を与えている」というグローバルスタンダードに合わせた変更です。

被選挙権(立候補できる権利)には、年齢の決まりがあります。 覚え方は 「知事と参議院は30、あとは25」 です。

被選挙権の年齢(覚え方:知事と参議院は30、あとは25)

25 歳以上
衆議院議員/地方議会の議員/市長・町長・村長
30 歳以上
知事/参議院議員

住民投票 ── 地域のことを決める

住民投票 は、地方自治体で何かあったときに自分の意見を投じる仕組みです。 日本初の住民投票は、新潟県 巻町 の「原発を必要とするか」をめぐる投票でした。

住民投票には、結果に 法的拘束力 がある場合と、ない場合があります。 法的拘束力があるのは次の3つだけです:

法的拘束力がある住民投票(3種類)

市町村合併
合併するか/しないか。
リコール
議員や首長を辞めさせるか/辞めさせないか。
地方特別法
その地方自治体だけに適用する特別な法律を、適用してよいか/だめか。

これ以外(米軍基地の是非/産業廃棄物処理場/原発/学校のクーラー設置 など)の住民投票は 住民の声を把握する参考 として扱われ、結果に法的拘束力はありません。 例えば「クーラー必要?」の住民投票で 99% が必要と答えても、必ずつけなければならないわけではないということです。

覚え方は 「合併・リコール・地方特別法だけ拘束力あり、あとはそれ以外」。 この3つだけ法的拘束力が認められているのは、地域の制度そのものを大きく変える事項だからです。

国民審査 ── 最高裁判官の信任

国民審査 は、最高裁判所に務める裁判官 15 人 を「辞めさせるかどうか」を国民が投票で決める仕組みです。 衆議院議員選挙と同時に行われます。

投票用紙には全員ではなく、「新しく任命された人」または「前回の国民審査から10年以上経過した人」の名前だけが載ります(だいたい5〜8人ほど)。 辞めさせたい人にバツ をつけ、バツが投票総数の過半数を超えれば罷免されます。

ただし これまで国民審査で罷免された最高裁判官は1人もいない、というのもこの制度の特徴です。

国民投票 ── 憲法改正の最終判断

国民投票 は、憲法改正 に賛成か反対かを国民が最終的に投じる仕組みです。 憲法 96 条 に手続きが明記されています。

しかし 96 条には「何歳から投票できるか」「何の過半数か」が書かれていないため、 これを補うために 国民投票法 が作られました。

国民投票法での規定

投票できる年齢
満 18 歳以上
「過半数」の基準
有効投票数の過半数

国民主権の4チャンネル

国民が「最終的に決める」場面

  • 選挙 ── 代表者を選ぶ(被選挙権 25 / 30)
  • 住民投票 ── 地域のこと(拘束力ありは 合併・リコール・地方特別法 の3つだけ)
  • 国民審査 ── 最高裁判官 15 名(衆院選と同時)
  • 国民投票 ── 憲法改正(96 条/国民投票法/18 歳以上/有効投票の過半数)

この講のおさえどころ

考えを深めるための論点

国民審査でこれまで一度も罷免された最高裁判官がいない、という事実は、この制度について何を意味するでしょうか?

ひとつの見方は、国民審査が 形だけの制度になっている という批判です。 投票用紙には裁判官の判決内容や経歴がほとんど示されないため、有権者が判断材料を持たないまま投票することが多いのが現状です。 もうひとつの見方は、最高裁判官の任命プロセス自体が信頼に足る ためという解釈です。 いずれにせよ、制度を実質的に機能させるためには「どの裁判官がどのような判決を下したか」を国民が知る仕組みが欠かせません。

「クーラーを設置するかどうか」を住民投票で決めても法的拘束力がないのに、なぜそうした住民投票を行うのでしょうか?

法的拘束力がなくても、住民投票は 地域の声を可視化する 重要な手段です。 99% が「必要」と回答した結果が出れば、自治体や議会がそれを無視するのは政治的に難しくなります。 つまり住民投票は、「決定」そのものではなく「決定への圧力」として機能するのです。 住民が政治に関わる入口を増やすという意味でも、住民投票という選択肢が用意されています。