非公開試作版 / 経済編 30「社会保障制度」(解説書籍版プロトタイプ)

第 3 部 / 経済編

社会保障制度 4つの柱/社会保険5種類/生活保護/少子高齢化と社会保障

講義動画

出典:市来公平 先生/プレイリスト上のタイトル「社会保障制度」(13:00)/TR-023

この講で説明できるようになるギモン

病気・怪我・失業・貧困・老後を社会で支える

社会保障制度 とは、病気・怪我・失業・貧困・老後といった生活が困難な状況で、国民を支える仕組みです。 日本では大きく 4 つの柱 に整理されています。

社会保障制度の4つの柱

社会保障制度

  • 社会保険 医療・雇用・労災・年金・介護
  • 公的扶助 生活保護(憲法25条)
  • 社会福祉 児童・老人・母子・障害者支援
  • 公衆衛生 予防接種・ゴミ収集・清掃

社会保険 ── 5 種類

「保」(健康保)と「保」(保室)は別の漢字です。 保室は無料の場、保普段からお金を積み立てて、いざという時にお金が戻る 仕組みです。

社会保険5種類

医療保険
病気・怪我のとき、治療費が原則 3 割負担で済む。マイナ保険証はこの制度の証。
雇用保険
リストラ等で失業したとき、ハローワーク経由で約1年間、給与の一部相当を受給できる。
労災保険
仕事中の怪我・病気の治療費等を支給。保険料は会社側が払う(唯一の例外)。
年金保険
老後の生活費。国民年金(20 歳〜60 歳が全員加入、月額約 1.75 万円)+会社員は厚生年金。
介護保険
40 歳から市町村に保険料を払い、65 歳以降の介護サービスを 1 割負担で利用できる。

日本は 国民皆保険—— 全員が何らかの医療保険に加入する仕組みです。 保険があるからこそ、急な入院や手術でも家計が破綻せずに済みます。

年金 ── 国民年金と厚生年金の二階建て

2 種類の年金

国民年金(基礎年金)
20 歳〜60 歳の全国民が加入。月額約 1.75 万円を支払う。
厚生年金
会社員が国民年金に 上乗せして払う。給料の額に応じて保険料が変わる。受給額もその分多い。

モデルケース:現役時代の平均年収 500 万円の会社員夫婦であれば、65 歳以降に 年間 約 273 万円(月 約 22.8 万円)を受給するイメージです。これを多いと見るか少ないと見るかが、年金論争の出発点です。

公的扶助 ── 生活保護

公的扶助 は、生活が立ち行かなくなった人に最低限度の生活を保障する制度で、一般には 生活保護 と呼ばれます。 根拠となる憲法条文は 第 25 条「生存権」です。

支給額は地域によって異なり、生活手当・住居手当などの形で支給されます。 加えて NHK 受信料・水道基本料・地方税・年金保険料などが 免除され、病院代も無料です。 日本の生活保護受給者は現在 約 200 万人です。

社会福祉と公衆衛生

残り2本の柱

社会福祉
児童・老人・母子家庭・障害者などの社会的弱者を支援。子ども手当/シルバーパス/障害者手帳など。
公衆衛生
国民全体の健康維持と環境保全。予防接種(高校卒業までに約 30 種類)/ゴミ収集(1 回約 77 円相当)/街の清掃など。

国によって違う「型」── 北欧型/大陸型/アメリカ型

社会保障の4類型

北欧型(イギリス・スウェーデン)
高負担・高福祉。消費税 25 〜 27%。「ゆりかごから墓場まで」(イギリス)。
大陸型(ドイツ・フランス)
中負担・中福祉のバランス型。
アメリカ型
低負担・低福祉。自己責任の比重が大きい。
日本型
大陸型寄りだが、現状はアメリカ型に近い位置。シルバー民主主義の影響で、徐々に北欧型寄りに動く流れもある。

少子高齢化と社会保障の負担

少子高齢化が進むと、税金や保険料を払う現役世代が減り、受け取る高齢世代が増えるという構造になります。 かつては高齢者 1 人を現役 3.6 人で支えていましたが、2050 年には 1 人で 1 人を支える「肩車型」になる見通しです。 負担金額にすると、現役 1 人あたり 約 3 倍に増える計算になります。

この講のおさえどころ

考えを深めるための論点

日本が今後「北欧型(高負担・高福祉)」に向かうべきか、「アメリカ型(低負担・低福祉)」に向かうべきかを考えなさい。

北欧型に向かう場合、税金・保険料は重くなりますが、医療・教育・老後の不安を社会が支えてくれます。 アメリカ型に向かう場合、自由度と勤労インセンティブは高くなりますが、医療費の自己負担や老後の備えはすべて個人責任になります。 現代日本は 少子高齢化 の進行で「高負担化」が避けにくい局面に入っており、 どこまでの負担と引き換えに、どんな安心を求めるか —— が問われています。

「シルバー民主主義」(高齢者寄りの政治)に対し、若い世代はどう向き合えばよいでしょうか?

最も直接的な対抗策は 「若者世代が投票に行く」ことです。 棄権が増えるほど政治は組織票・高齢者票を重視するようになります。 加えて、年代を超えて「現役世代の働きやすさ」「子育て支援」「教育投資」を訴える候補を見極めて応援することも、世代間バランスを取り戻す手段になります。