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この講には授業動画(TR-018)が存在します。動画 URL 受領後に iframe を埋め込む予定です。それまでは PDF 原本(経済編 p.15)をもとにした Web 解説をご覧ください。
この講で説明できるようになるギモン
- 労働基本権って何?労働三権って何?団体交渉権って何?争議権って何?
- 公務員がストライキをしてはいけないのはなぜ?ロックアウトって何?
- 労働三法って何?1日と1週間の労働時間の上限って何時間?
- 男女雇用機会均等法ってどんな内容?完全失業率って何?
- ワークシェアリングって何?ワーキング・プアって何?
- 終身雇用って何?成果主義って何?
「働く権利」は憲法が保障している
「働く」ことは生きることと直結しています。しかし、使用者(会社の経営者)と労働者の間には、もともと大きな力の差があります。この不均衡を是正するため、日本国憲法は全ての労働者に労働基本権を保障し、三つの法律(労働三法)で具体的な保護を実現しています。
市来公平先生の言葉:「日本国憲法が認めているということは、外国人労働者であっても、正規雇用であろうが非正規であろうが、この労働の権利や法律は適用される。」
労働問題のキー要素
労働三権・三法・雇用の現状
- 労働三権 団結権(労組結成)・団体交渉権(使用者と話し合い)・団体行動権=争議権(ストライキ)
- ストライキ 労働者側の争議手段。刑事上・民事上の免責あり
- ロックアウト 使用者側の対抗手段(作業所を閉鎖)
- 公務員 ストライキ禁止(全体の奉仕者)
- 労働基準法 1日8時間・週40時間以内
労働基本権(労働権・労働三権)
世の中的には使用者(経営者)の方が立場が強く、労働者は立場が弱い。この不均衡を是正するため、日本国憲法が権利と法律を整備している。
労働権(日本国憲法第27条):働く権利
労働三権(日本国憲法第28条):
| 権利名 | 内容 |
|---|---|
| 団結権 | 労働組合への加入・結成OK |
| 団体交渉権 | 労働組合として使用者と話し合いができる(使用者は拒否できない) |
| 団体行動権(争議権) | 労働組合の権利をめぐって戦う権利。ストライキ(労務の提供拒否)が代表例 |
ストライキ(争議権行使)について
- 刑事上・民事上の免責
- 正当なストライキに対して、損害賠償請求や逮捕は認められない。ただし、ストライキ中であっても「人を殴る」などの不法行為は当然罰せられる。
ロックアウト(使用者側の対抗手段)
- ロックアウト
- 必要以上にストライキなどをされた際には、使用者は作業所を閉鎖できる。ロックアウトが正当であれば、使用者は労働者に対しその期間の賃金を支払わなくてよい。
公務員のストライキ禁止
- 禁止の根拠
- 公務員は全員、団体行動権(ストライキ)の行使は禁止。根拠:憲法に「全体の奉仕者」と書かれているため(消防士・教師・市役所職員すべて)。
- 労働組合の結成
- 治安維持系(警察・消防・自衛隊)以外の公務員は労働組合の結成は可能(ストライキは不可)。
労働三法
| 年 | 法律名 | 内容 |
|---|---|---|
| 1945年 | 労働組合法 | 労働組合を作ってよい。組合結成・加入を理由にした解雇・賃金削減は禁止 |
| 1946年 | 労働関係調整法 | 労使対立を調整するための法律。公務員のストライキ禁止についても規定 |
| 1947年 | 労働基準法 | 労働条件の最低基準を定める法律 |
労働基準法の主な内容
- 労働時間
- 1日8時間・週40時間以内
- 休日
- 週1日は休日を設定(有給休暇の保障)
- 男女同一賃金の原則
- 男女の性別を理由に賃金を変えることは禁止
- 満15歳未満の労働禁止
- ※映画・演劇など芸術事業は例外
- 満18歳未満の深夜労働禁止
- 22時以降の深夜労働は禁止
- フレックスタイム制
- フレックスタイム制:始業・終業時刻を労働者が自由に決定できる制度
- 監視機関
- 労働基準監督署(通称:労基)→ 違反企業は「ブラック企業」として認定・公表
その他の労働関連法
| 年 | 法律名 | 内容 |
|---|---|---|
| 1985年 | 男女雇用機会均等法 | 職場での男女平等を求め、性別による差別の禁止。採用で男性・女性限定募集は原則禁止 |
| 1995年 | 育児・介護休業法 | 男女ともに、育児・介護休業申請が可能(育休は子が1歳になるまで。期間中は給料の50%支給) |
| 1999年 | 男女共同参画社会基本法 | ポジティブアクション(不遇な立場の人の地位向上のための措置)が推進されるようになった |
日本の雇用・労働の現状
雇用形態の変化
- 終身雇用制+年功序列型賃金制
- 伝統的な日本の雇用形態。終身雇用制(原則定年まで解雇しない)+年功序列型賃金制(年齢が上がるほど給料が上がる)が中心だった。
- 成果報酬制
- 近年の変化として成果報酬制が広まっている。実力に応じて給料が決まり、結果次第で解雇もありうる。
労働環境の現状
- 完全失業率
- 完全失業率(働きたくても仕事につけない人の率):約3〜4%(近年平均)。失業率改善のため、ワークシェアリング(一定の仕事を分かち合うこと)も試みられている。
- 非正規雇用労働者の増加
- 契約社員・派遣社員・パート・アルバイトなど非正規雇用の労働者が増加している。
- ワーキング・プア
- ワーキング・プア:普通に働いても生活の維持が困難な労働者層の増加。
- ニート
- ニート:雇用もされず、就労に向けた訓練も受けず、学校に行っていない人。
- 外国人労働者の増加
- グローバル化に伴い、外国人労働者が増加している。
- その他の問題
- 過労死・サービス残業の問題。
この講のおさえどころ
- 労働三権(憲法第28条)の3つは?団結権・団体交渉権・団体行動権(争議権)
- ストライキに対して使用者ができる対抗手段は?ロックアウト(作業所を閉鎖)
- 公務員がストライキできない根拠は?全体の奉仕者(憲法の規定)
- 労働三法を年代順に3つ答えよ1945 労働組合法・1946 労働関係調整法・1947 労働基準法
- 労働基準法が定める1日・1週の最大労働時間は?1日8時間・週40時間以内
- ブラック企業を認定・公表する機関は?労働基準監督署(労基)
- 男女雇用機会均等法は何年制定?1985年
- 完全失業率とは?働きたくても仕事につけない人の率(近年3〜4%)
考えを深めるための論点
市来公平先生からの問い:「『安定の終身雇用』と『実力勝負の成果主義』、働くならどちらを選びますか?その理由は?」
終身雇用は「安定」の代名詞だったが、バブル崩壊後の経済停滞・人口減少・グローバル化の中で揺らいでいる。 1990年代以降、多くの大企業が成果主義を導入したが、「短期業績偏重」「チームワークの崩壊」「長期育成の軽視」などの問題も浮上した。 最近は「ジョブ型雇用」(職務内容を明確にして採用・評価する仕組み)への移行も増えている。 どちらが「いい」かは個人の価値観によるが、重要なのは「自分の働き方を主体的に選択できる力」を持つこと。 日本の労働者がより良い待遇を求めて転職・交渉できる社会を作るためには、労働基本権の知識と活用が不可欠だ。