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この講は動画が用意されていません。PDF原本(経済編 p.13)の流れを Web 解説として再構成しています。
この講で説明できるようになるギモン
- 景気変動の4つの局面って何?景気が一番いい状態を何て言う?恐慌って何?
- ポリシー・ミックスって何?財政政策と金融政策の違いって何?
- 好景気のときは世の中のお金はどうする?不景気のときは世の中のお金はどうする?
- ビルト・イン・スタビライザーって何?フィスカル・ポリシーって何?
- ケインズはどんな考え方をした?不景気のときに政府は公共事業を行うべきとする考えは?
- 日銀の公開市場操作って何?売りオペって何?買いオペって何?
- 日銀の3つの役割って何?金融引締政策って何?
景気を「操作」する2つの手段
好況・後退・不況・回復——経済は常に波打って動いています。この「景気の波」を和らげ、国民生活を安定させるために、政府と日本銀行が協力して経済政策を行います。 財政政策(政府)と金融政策(日本銀行)の2つの手段を同時に行うことをポリシー・ミックスといいます。
経済政策のキー要素
景気を安定させる2本柱
- 景気変動 好況→後退→不況→回復の4局面が周期的に繰り返される
- 財政政策 政府が行う景気調整
- 金融政策 日本銀行が行う景気調整
- ポリシー・ミックス 財政政策と金融政策を同時に行う経済政策
- 基本原則 好景気→世の中のお金を回収 不景気→世の中へお金を放出
景気変動(景気循環)
経済活動が活発になったり低迷したりするのを繰り返すこと。資本主義社会では「好況・後退・不況・回復」の4つの局面が周期的に現れるとされている。
4つの局面
- 好況
- 企業は生産と投資を拡大。経済活動が最も活発な状態。
- 後退
- 生産過剰で在庫増加。経済活動が縮小していく時期。
- 不況
- 企業の倒産・失業が最高水準に。経済活動が停滞する時期。
- 回復
- 在庫が減り始める。経済活動が活気を取り戻す時期。
※好況局面で突如発生する深刻な景気後退を恐慌という。
景気調整の基本的な考え方
- 好景気のとき
- 世の中のお金を回収する(通貨量を抑制)
- 不景気のとき
- 世の中へお金を放出する(通貨量を増大)
財政政策(政府が行う景気調整)
財政政策と金融政策を同時に行う経済政策をポリシー・ミックスという。
ビルト・イン・スタビライザー(景気の自動安定化装置)
ビルト・イン・スタビライザー:累進課税と社会保険を活用した自動的な景気調節。
- 好景気では
- 累進課税での収入が増え、社会保障の実施が減少することにより、市中の通貨量が抑制される
- 不景気では
- 累進課税での収入が減り、社会保障の実施が増加することにより、市中の通貨量が増大していく
所得の再分配:市場経済により生まれた所得格差を是正するために、累進課税制度や社会保険制度を実施し、低所得者に還元すること。
フィスカル・ポリシー(伸縮的財政政策)
フィスカル・ポリシー:政府による意図的な景気調節。ケインズが提唱した修正資本主義の考えに基づく。
- 好景気では
- 増税をし、公共事業を減らすことにより、世の中に回る通貨量を抑制させる
- 不景気では
- 減税をし、公共事業を増やすことにより、世の中に回る通貨量を増大させる
金融政策(日本銀行が行う景気調整)
日本銀行には「唯一の発券銀行・政府の銀行・銀行の銀行」という3つの役割がある。
公開市場操作(日銀が国債を売買することで通貨量を調整する)
- 好景気では
- 売りオペレーション(市中銀行に国債を売る)により、世の中に出回る通貨量を抑制させる
- 不景気では
- 買いオペレーション(市中銀行から国債を買う)により、世の中に出回る通貨量を増大させる
預金準備率操作(日銀が預金準備率を上下させることで通貨量を調整する)
※預金準備率:銀行が顧客に預金から必ず確保しなければならないお金の割合
- 好景気では
- 預金準備率を上げ、一般銀行が貸し出しにくくし、世の中に出回る通貨量を抑制させる
- 不景気では
- 預金準備率を下げ、一般銀行が貸し出しやすくし、世の中に出回る通貨量を増大させる
まとめ(好況時・不況時の比較)
| 好景気(好況期) | 不景気(不況期) | |
|---|---|---|
| 政府(財政政策) | 増税・公共事業減・社会保障減 | 減税・公共事業増・社会保障増 |
| 日銀(金融政策) | 売りオペ・預金準備率上昇→金融引締政策(通貨量抑制) | 買いオペ・預金準備率引下げ→金融緩和政策(通貨量増大) |
この講のおさえどころ
- 景気変動の4つの局面は?好況・後退・不況・回復
- 財政政策と金融政策の違いは?財政政策は政府が行う景気調整、金融政策は日本銀行が行う景気調整
- 両方を同時に行うことを何という?ポリシー・ミックス
- ビルト・イン・スタビライザーとは?累進課税と社会保険を活用した景気の自動安定化装置
- フィスカル・ポリシーとは?政府が意図的に増税・減税・公共事業増減を行う伸縮的財政政策(ケインズの考えに基づく)
- 不景気のとき、日銀は「売りオペ」「買いオペ」どちらを行う?買いオペ(市中銀行から国債を買い、通貨量を増大させる)
- 日本銀行の3つの役割は?唯一の発券銀行・政府の銀行・銀行の銀行
- 所得の再分配とは?累進課税や社会保険制度を通じて、市場経済で生じた所得格差を是正し低所得者に還元すること
考えを深めるための論点
市来公平先生からの問い:「不景気のとき、政府は公共事業(道路・橋の建設など)を行うべきでしょうか?それとも、民間の自由に任せるべきでしょうか?」
ケインズが提唱した修正資本主義では「不景気のとき、市場の失敗を補うために政府が積極的に公共投資を行うべきだ」と主張した。 実際、アメリカのニューディール政策(1930年代)、日本の公共事業主導の景気対策は一定の効果を上げた。 一方、「政府が市場に介入しすぎると非効率が生まれる」(小さな政府の主張)という意見もある。 これは経済編全体を貫く「大きな政府か小さな政府か」という根本的な問いでもある。 どちらが正しいかではなく、経済状況・財政状況を踏まえた判断が求められる。