講義動画
この講で説明できるようになるギモン
- 国際社会はいつから始まった?
- 国際法には何がある? 提唱者は?
- 勢力均衡方式と集団安全保障方式の違いは?
- 国際連盟がうまく機能しなかった理由は?
- 国際連合の主要機関は? 拒否権を持つ国は?
- PKO・PKF の違いと、日本の初参加地は?
国際社会 = 国と国のお付き合い
国際社会とは「国と国のお付き合い」のこと。 その始まりは 1648 年の ウェストファリア条約。30 年戦争を終わらせ、主権国家の枠組みが確立しました。 ここから「国どうしのルール」と「国どうしの協力体制」が必要になっていきます。
国際法 ── グロティウスと2種類のルール
国際法の父と呼ばれる グロティウス(オランダ)は『戦争と平和の法』で国際法の必要性を説きました。
国際法の2種類
- 条約
- 文章で書かれたルール。協定・議定書・憲章なども含む。
- 国際慣習法
- 文章にはなっていないが世界で守られているルール。例:公海自由の原則/船同士の衝突回避ルール(右に避ける)など。
2つの協力体制 ── 勢力均衡方式 と 集団安全保障方式
2 つの考え方
- 勢力均衡方式
- 気の合う仲間で陣営を作り、対立陣営とにらみ合うことで戦争を抑える。連鎖反応で大戦に発展しやすい欠点があり、第一次世界大戦の原因となった。
- 集団安全保障方式
- 世界全体で1つのグループを作り、国際法に反する国を集団で制裁する。カント『永遠平和のために』で提唱、ウィルソン米大統領「平和原則 14 か条」で具体化。
国際連盟(1920)── うまくいかなかった3つの理由
国際連盟 は1920年に設立され、日本も中心メンバーでした。しかし機能不全に陥り、第二次世界大戦を防げませんでした。
- ① 言い出しっぺの アメリカが不参加
- ② 重要事項は 全会一致—— 1か国でも反対すれば決まらない
- ③ 制裁は 経済制裁のみ—— 武力での強制ができない
国際連合(1945)── サンフランシスコ会議で成立
第二次世界大戦の反省から、1945 年のサンフランシスコ会議で 国際連合(UN) が成立しました。 基本的には すべての国が参加でき、バチカン市国・EU・パレスチナなどはオブザーバー参加できます。
※ 1951 年のサンフランシスコ平和会議とは別。1951 年は日本が連合国と講和した会議。同じ都市だが時期と意味が違うので混同しないこと。
国連の主要機関
国際連合 6 つの主要機関
- 総会 全加盟国 1 国 1 票・決定は拘束力なし
- 安全保障理事会 5 大国+非常任 10 国・武力制裁あり
- 事務局 トップは事務総長(任期5年・最長2期)
- 国際司法裁判所 オランダ・ハーグ/国 vs 国/同意必要
- 経済社会理事会 12 専門機関を統括
- 信託統治理事会 活動停止中
総会と安保理の違い
決定力の違い
- 総会
- 全加盟国が 1 国 1 票(票数平等)で投票。決定事項に 法的拘束力がない。守らなくてもペナルティなし。
- 安全保障理事会
- 最重要機関。決定に逆らうと 武力制裁を受ける可能性がある。重要事項は 5 大国の全会一致 が必要(1 国でも反対なら否決)。
安保理の常任理事国は アメリカ・フランス・ロシア・中国・イギリス(「アフロ注囲」で覚える)。 この 5 か国は 拒否権 を持ち、1 か国でも反対すれば重要決議は通りません。 ロシアのウクライナ侵攻のような場面でも、当事国が拒否権を発動すれば国連としての制裁は機能しない—— という構造的問題があります。
非常任理事国は 10 か国で、2 年ごとに半数改選。日本はこれまで 13 回選ばれています。 日本・ドイツ・イタリアは「旧敵国条項」により、常任理事国にはなれない仕組みが残っています。
事務局・国際司法裁判所・専門機関
事務局のトップ=事務総長。任期 5 年・最長 2 期(10 年)。原則として 5 大国以外から選ばれます。 現職はアントニオ・グテーレス(ポルトガル)で、任期は 2026 年まで。
国際司法裁判所(ICJ) はオランダの ハーグに所在。国 vs 国の裁判のみ扱い、両国の同意がなければ裁判できません。 個人の犯罪を扱う 国際刑事裁判所(ICC)も同じハーグにあります。
経済社会理事会は 12 の専門機関を統括。中学生レベルで覚えるべき機関: ILO・IMF・IBRD・IAEA・UNHCR・UNICEF・UNEP・UNESCO・UNCTAD・WHO・WTO・FAO。 頭文字のルール:「I」=International、「UN」=United Nations、「W」=World、「O」=Organization。FAO だけが例外で UN がつかない。
PKO(国連平和維持活動)
PKO(Peace Keeping Operations)は、紛争地域での平和的解決を促す国連の活動です。 3 つの仕事があります。
PKO の 3 つの活動
- PKF(平和維持軍)
- 紛争終了後の地域で軍隊が警備する。怪しい動きには武力で対応可。日本はまだ参加例なし。
- 停戦監視団
- 道路・下水道・橋などのインフラを修復し、停戦を維持する。
- 選挙監視団
- 独裁体制下では選挙が不正に行われる恐れがあるため、第三者が監視する。
日本の PKO 初参加地は 1992 年 カンボジア。きっかけは 1991 年の湾岸戦争で日本が「金だけ出して汗をかかない」と批判されたことです。 PKO は紛争が終結した地域でしか活動しない—— というルールがあります。
この講のおさえどころ
- 国際社会の始まりとされる条約は?ウェストファリア条約(1648 年)
- 国際法の父と呼ばれる人物と著書は?グロティウス『戦争と平和の法』
- 集団安全保障方式を提唱したのは誰?カント『永遠平和のために』
- 国連の常任理事国 5 か国は?アメリカ・フランス・ロシア・中国・イギリス(アフロ注囲)
- 国際司法裁判所の所在地は?オランダ・ハーグ
- 日本の PKO 初参加地は?1992 年 カンボジア
考えを深めるための論点
安全保障理事会の常任理事国が拒否権を発動すれば、国連としての制裁が機能しない—— この構造をどう改善できるでしょうか?
改革案として議論されているのは 「拒否権の制限」(人道に関わる事案では使えないようにする)、 「常任理事国の拡大」(日本・ドイツ・インド・ブラジルなどを追加し、特定国の影響力を相対化する)など。 ただしいずれの改革にも 現常任理事国の合意が必要—— つまり改革したい側が拒否権を持っていないという、構造的なジレンマがあります。 国連を捨てるか、改革しながら使い続けるか。後者を選ぶなら、地道な国際交渉が必要です。