非公開試作版 / 政治編 19「国際社会」
19

第 2 部 / 政治編

国際社会国際法/国際連盟と国際連合/総会と安保理/PKO

講義動画

出典:市来公平 先生/TR-001「国際社会(国際連盟と国際連合)」

この講で説明できるようになるギモン

国際社会 = 国と国のお付き合い

国際社会とは「国と国のお付き合い」のこと。 その始まりは 1648 年の ウェストファリア条約。30 年戦争を終わらせ、主権国家の枠組みが確立しました。 ここから「国どうしのルール」と「国どうしの協力体制」が必要になっていきます。

国際法 ── グロティウスと2種類のルール

国際法の父と呼ばれる グロティウス(オランダ)は『戦争と平和の法』で国際法の必要性を説きました。

国際法の2種類

条約
文章で書かれたルール。協定・議定書・憲章なども含む。
国際慣習法
文章にはなっていないが世界で守られているルール。例:公海自由の原則/船同士の衝突回避ルール(右に避ける)など。

2つの協力体制 ── 勢力均衡方式 と 集団安全保障方式

2 つの考え方

勢力均衡方式
気の合う仲間で陣営を作り、対立陣営とにらみ合うことで戦争を抑える。連鎖反応で大戦に発展しやすい欠点があり、第一次世界大戦の原因となった。
集団安全保障方式
世界全体で1つのグループを作り、国際法に反する国を集団で制裁する。カント『永遠平和のために』で提唱、ウィルソン米大統領「平和原則 14 か条」で具体化。

国際連盟(1920)── うまくいかなかった3つの理由

国際連盟 は1920年に設立され、日本も中心メンバーでした。しかし機能不全に陥り、第二次世界大戦を防げませんでした。

国際連合(1945)── サンフランシスコ会議で成立

第二次世界大戦の反省から、1945 年のサンフランシスコ会議で 国際連合(UN) が成立しました。 基本的には すべての国が参加でき、バチカン市国・EU・パレスチナなどはオブザーバー参加できます。

1951 年のサンフランシスコ平和会議とは別。1951 年は日本が連合国と講和した会議。同じ都市だが時期と意味が違うので混同しないこと。

国連の主要機関

国際連合 6 つの主要機関

  • 総会 全加盟国 1 国 1 票・決定は拘束力なし
  • 安全保障理事会 5 大国+非常任 10 国・武力制裁あり
  • 事務局 トップは事務総長(任期5年・最長2期)
  • 国際司法裁判所 オランダ・ハーグ/国 vs 国/同意必要
  • 経済社会理事会 12 専門機関を統括
  • 信託統治理事会 活動停止中

総会と安保理の違い

決定力の違い

総会
全加盟国が 1 国 1 票(票数平等)で投票。決定事項に 法的拘束力がない。守らなくてもペナルティなし。
安全保障理事会
最重要機関。決定に逆らうと 武力制裁を受ける可能性がある。重要事項は 5 大国の全会一致 が必要(1 国でも反対なら否決)。

安保理の常任理事国は アメリカ・フランス・ロシア・中国・イギリス(「アフロ注囲」で覚える)。 この 5 か国は 拒否権 を持ち、1 か国でも反対すれば重要決議は通りません。 ロシアのウクライナ侵攻のような場面でも、当事国が拒否権を発動すれば国連としての制裁は機能しない—— という構造的問題があります。

非常任理事国は 10 か国で、2 年ごとに半数改選。日本はこれまで 13 回選ばれています。 日本・ドイツ・イタリアは「旧敵国条項」により、常任理事国にはなれない仕組みが残っています。

事務局・国際司法裁判所・専門機関

事務局のトップ=事務総長。任期 5 年・最長 2 期(10 年)。原則として 5 大国以外から選ばれます。 現職はアントニオ・グテーレス(ポルトガル)で、任期は 2026 年まで。

国際司法裁判所(ICJ) はオランダの ハーグに所在。国 vs 国の裁判のみ扱い、両国の同意がなければ裁判できません。 個人の犯罪を扱う 国際刑事裁判所(ICC)も同じハーグにあります。

経済社会理事会は 12 の専門機関を統括。中学生レベルで覚えるべき機関: ILO・IMF・IBRD・IAEA・UNHCR・UNICEF・UNEP・UNESCO・UNCTAD・WHO・WTO・FAO。 頭文字のルール:「I」=International、「UN」=United Nations、「W」=World、「O」=Organization。FAO だけが例外で UN がつかない。

PKO(国連平和維持活動)

PKO(Peace Keeping Operations)は、紛争地域での平和的解決を促す国連の活動です。 3 つの仕事があります。

PKO の 3 つの活動

PKF(平和維持軍)
紛争終了後の地域で軍隊が警備する。怪しい動きには武力で対応可。日本はまだ参加例なし
停戦監視団
道路・下水道・橋などのインフラを修復し、停戦を維持する。
選挙監視団
独裁体制下では選挙が不正に行われる恐れがあるため、第三者が監視する。

日本の PKO 初参加地は 1992 年 カンボジア。きっかけは 1991 年の湾岸戦争で日本が「金だけ出して汗をかかない」と批判されたことです。 PKO は紛争が終結した地域でしか活動しない—— というルールがあります。

この講のおさえどころ

考えを深めるための論点

安全保障理事会の常任理事国が拒否権を発動すれば、国連としての制裁が機能しない—— この構造をどう改善できるでしょうか?

改革案として議論されているのは 「拒否権の制限」(人道に関わる事案では使えないようにする)、 「常任理事国の拡大」(日本・ドイツ・インド・ブラジルなどを追加し、特定国の影響力を相対化する)など。 ただしいずれの改革にも 現常任理事国の合意が必要—— つまり改革したい側が拒否権を持っていないという、構造的なジレンマがあります。 国連を捨てるか、改革しながら使い続けるか。後者を選ぶなら、地道な国際交渉が必要です。