講義動画
この講で説明できるようになるギモン
- 被疑者・被告人・犯罪者の違いは?
- 刑事裁判と民事裁判の違いは?
- 三審制とは? なぜ3回も裁判できる?
- 違憲審査権はどの裁判所が持っている?
- 司法権の独立を象徴する事件は?
- 裁判員制度の対象と人数は?
「逮捕=犯罪者」ではない
まず用語を整理します。
段階で変わる呼び方
- 被疑者(マスコミ用語:容疑者)
- 逮捕された段階。まだ犯罪者ではない。
- 被告人
- 裁判で訴えられた人(=起訴された人)。まだ犯罪者ではない。
- 犯罪者
- 刑が確定した人。ここで初めて犯罪者となる。
憲法は 推定無罪の原則を採用しています。 「疑わしきは罰せず」「疑わしきは被告人の利益に」—— 有罪が確定するまでは無罪として扱うのが司法の大原則です。
裁判の2区分
刑事裁判 vs 民事裁判
- 刑事裁判 有罪・無罪を決める/検察官 vs 被告人
- 民事裁判 損害賠償等を決める/原告 vs 被告
- 行政裁判 民事裁判の一種(被告が国・地方公共団体)
刑事裁判と民事裁判の違い
登場人物と用語
- 刑事裁判
- 検察官(原告)vs 被告人。被告人には 憲法で弁護人依頼権が保障。お金がなくても 国選弁護人がつく(無料)。
- 民事裁判
- 原告(一般人)vs 被告(「被告人」ではない)。弁護人依頼権は 憲法では保障されない。国選弁護人なし。
「弁護士」と「弁護人」は別の言葉。法律用語は 弁護人。テストで聞かれたら「弁護人」と答えること(被議者ではなく 被疑者も同様)。
三審制と再審
日本の裁判は最大 3 回受けられます(三審制)。冤罪を防ぐための慎重審議です。
- 第一審 → 第二審:控訴
- 第二審 → 第三審:上告
刑事裁判の第三審は必ず最高裁判所。人生が変わる判決だからこそ、最終判断は最高裁が責任を持ちます。 民事裁判の第三審は最高裁にならないこともあります。
再審の決定的ポイント
- 有罪確定後の再審
- 新証拠が出ればやり直し可能。冤罪救済の仕組み。
- 無罪確定後の再審
- 不可。憲法の「一事不再理」の原則。
裁判は 公開の原則。判決は 例外なく公開。審理は混乱を招く恐れがあれば非公開にすることもできますが、判決は必ず公開です。
裁判所の種類
5 種類の裁判所
- 最高裁判所
- 東京。長官1名+裁判官 14 名=合計 15 名。奇数(判断を分けるため)。
- 高等裁判所
- 全国 8 か所(8 地方区分に1か所)。四国だけは「松山」ではなく 高松。
- 地方裁判所・家庭裁判所
- 全国 50 か所(北海道は広いため 4 分割)。地裁と家裁は必ず同じ敷地。
- 簡易裁判所
- 全国 438 か所。10 万人前後の都市レベルで設置。
違憲審査権 ── 全裁判所が持っている
違憲審査権 は、ある法律・行為が憲法に違反していないかをチェックする権限です。 すべての裁判所が持っていますが、最終判断は最高裁判所—— だから最高裁は「憲法の番人」と呼ばれます。
※ 「違憲立法審査権」と書いてある参考書もあります。法律だけでなく内閣の政令などもチェック対象なので、本書では包括的な「違憲審査権」で覚えるのが安全です。
司法権の独立 ── 大津事件
司法権の独立を守った象徴的な例が 大津事件(1891 年)です。
ロシアの皇太子が日本訪問中に警察官に襲われた事件で、政府は 「死刑」を要求しましたが、 当時の大審院長 児島惟謙 は「法律上は無期懲役までしか科せない」として、政府の圧力に屈せず無期懲役の判決を確定させました。 裁判官は法と良心のみに従う—— これが司法権の独立の核心です。
裁判官が罷免されるのは次の3つの場合のみ:
- 心身の故障で職務不能
- 弾劾裁判所(国会が設置)で罷免と決まる
- 国民審査(最高裁判官 15 名のみ対象)で過半数のバツを受ける
裁判員制度
裁判員制度 は、重大な刑事裁判の第一審に一般市民が参加する制度です。
裁判員制度の基本
- 対象
- 重大刑事事件の第一審のみ(民事裁判は対象外)
- 人数
- 裁判官 3 名+裁判員 6 名=合計 9 名(奇数)
- 選ばれ方
- 18 歳以上からくじ引きで選出。通知が届く。
- 謝礼
- 1 回出席で 1 万円程度(交通費は別)。
- 辞退
- 原則できないが、入院・出産直前・学業中などは特別な理由として認められる。
この講のおさえどころ
- 逮捕された段階の正式な呼び方は?被疑者(マスコミ用語:容疑者)
- 刑事裁判で原告となるのは誰?検察官
- 刑事裁判で被告人につく無料の弁護人を何という?国選弁護人
- 三審制の段階の呼び方は?第一審 → 第二審(控訴)→ 第三審(上告)
- 「無罪確定後の再審」は可能?不可(一事不再理の原則)
- 最高裁判所の裁判官の数は?15 名(長官1+14)
- 違憲審査権はどの裁判所が持っている?すべての裁判所。最終判断は最高裁。
- 司法権の独立を守った事件は?大津事件(児島惟謙)
- 裁判員制度の構成人数は?裁判官 3 + 裁判員 6 = 9 名
考えを深めるための論点
「無罪確定後は再審できない(一事不再理)」というルールは、被害者の感情から見れば不公平に見えるかもしれません。それでもこのルールが守られるのはなぜでしょうか?
理由は 「人を 2 度同じ罪で裁いてはならない」という人権保障の根本にあります。 無罪確定後も再審が認められるなら、国家はいつまでも個人を追い続けることができ、個人の人生が安定しません。 被害者感情を理解しつつも、「無罪が確定した人は法的に決着済み」とすることが、結果的に すべての国民の自由と安心を守ることになるのです。 近代司法の根幹をなす重要な原則です。