非公開試作版 / 政治編 17「裁判所(司法)」
17

第 2 部 / 政治編 / 日本国憲法 第6章

裁判所(司法)刑事と民事/三審制/違憲審査権/裁判員制度

講義動画

動画ファイル提供待ち

出典:市来公平 先生/TR-024「司法(裁判)」(22:59)

この講で説明できるようになるギモン

「逮捕=犯罪者」ではない

まず用語を整理します。

段階で変わる呼び方

被疑者(マスコミ用語:容疑者)
逮捕された段階。まだ犯罪者ではない。
被告人
裁判で訴えられた人(=起訴された人)。まだ犯罪者ではない。
犯罪者
刑が確定した人。ここで初めて犯罪者となる。

憲法は 推定無罪の原則を採用しています。 「疑わしきは罰せず」「疑わしきは被告人の利益に」—— 有罪が確定するまでは無罪として扱うのが司法の大原則です。

裁判の2区分

刑事裁判 vs 民事裁判

  • 刑事裁判 有罪・無罪を決める/検察官 vs 被告人
  • 民事裁判 損害賠償等を決める/原告 vs 被告
  • 行政裁判 民事裁判の一種(被告が国・地方公共団体)

刑事裁判と民事裁判の違い

登場人物と用語

刑事裁判
検察官(原告)vs 被告人。被告人には 憲法で弁護人依頼権が保障。お金がなくても 国選弁護人がつく(無料)。
民事裁判
原告(一般人)vs 被告(「被告人」ではない)。弁護人依頼権は 憲法では保障されない。国選弁護人なし。

「弁護士」と「弁護人」は別の言葉。法律用語は 弁護人。テストで聞かれたら「弁護人」と答えること(被議者ではなく 被疑者も同様)。

三審制と再審

日本の裁判は最大 3 回受けられます(三審制)。冤罪を防ぐための慎重審議です。

刑事裁判の第三審は必ず最高裁判所。人生が変わる判決だからこそ、最終判断は最高裁が責任を持ちます。 民事裁判の第三審は最高裁にならないこともあります

再審の決定的ポイント

有罪確定後の再審
新証拠が出ればやり直し可能。冤罪救済の仕組み。
無罪確定後の再審
不可。憲法の「一事不再理」の原則。

裁判は 公開の原則。判決は 例外なく公開。審理は混乱を招く恐れがあれば非公開にすることもできますが、判決は必ず公開です。

裁判所の種類

5 種類の裁判所

最高裁判所
東京。長官1名+裁判官 14 名=合計 15 名。奇数(判断を分けるため)。
高等裁判所
全国 8 か所(8 地方区分に1か所)。四国だけは「松山」ではなく 高松
地方裁判所・家庭裁判所
全国 50 か所(北海道は広いため 4 分割)。地裁と家裁は必ず同じ敷地
簡易裁判所
全国 438 か所。10 万人前後の都市レベルで設置。

違憲審査権 ── 全裁判所が持っている

違憲審査権 は、ある法律・行為が憲法に違反していないかをチェックする権限です。 すべての裁判所が持っていますが、最終判断は最高裁判所—— だから最高裁は「憲法の番人」と呼ばれます。

※ 「違憲立法審査権」と書いてある参考書もあります。法律だけでなく内閣の政令などもチェック対象なので、本書では包括的な「違憲審査権」で覚えるのが安全です。

司法権の独立 ── 大津事件

司法権の独立を守った象徴的な例が 大津事件(1891 年)です。

ロシアの皇太子が日本訪問中に警察官に襲われた事件で、政府は 「死刑」を要求しましたが、 当時の大審院長 児島惟謙 は「法律上は無期懲役までしか科せない」として、政府の圧力に屈せず無期懲役の判決を確定させました。 裁判官は法と良心のみに従う—— これが司法権の独立の核心です。

裁判官が罷免されるのは次の3つの場合のみ:

裁判員制度

裁判員制度 は、重大な刑事裁判の第一審に一般市民が参加する制度です。

裁判員制度の基本

対象
重大刑事事件の第一審のみ(民事裁判は対象外)
人数
裁判官 3 名+裁判員 6 名=合計 9 名(奇数)
選ばれ方
18 歳以上からくじ引きで選出。通知が届く。
謝礼
1 回出席で 1 万円程度(交通費は別)。
辞退
原則できないが、入院・出産直前・学業中などは特別な理由として認められる。

この講のおさえどころ

考えを深めるための論点

「無罪確定後は再審できない(一事不再理)」というルールは、被害者の感情から見れば不公平に見えるかもしれません。それでもこのルールが守られるのはなぜでしょうか?

理由は 「人を 2 度同じ罪で裁いてはならない」という人権保障の根本にあります。 無罪確定後も再審が認められるなら、国家はいつまでも個人を追い続けることができ、個人の人生が安定しません。 被害者感情を理解しつつも、「無罪が確定した人は法的に決着済み」とすることが、結果的に すべての国民の自由と安心を守ることになるのです。 近代司法の根幹をなす重要な原則です。