講義動画
この講で説明できるようになるギモン
- 選挙に関する日本の法律は1つだけ。何という法律?
- 選挙の四原則は?
- 小選挙区/大選挙区/比例代表の長所と短所は?
- 一票の格差はなぜ生まれる?
- 連座制/ネット選挙のルールは?
- ドント式の計算方法は?
選挙のルールは「1つの法律」に集約
日本で選挙に関するルールをまとめている法律は、ただ 1 つ 公職選挙法 です。 投票年齢・被選挙権・ポスター枚数・SNS の扱い—— すべてこの法律に書かれています。
日本国憲法に書かれている 選挙の規定は第 15 条のみで、内容は 「成年者による普通選挙を保障する」だけです。 具体的な年齢や手続きは公職選挙法にあります。
選挙の四原則
4 つの原則
- 普通選挙 性別・納税で差別しない
- 直接選挙 本人が投票する
- 秘密選挙 誰に入れたかは秘密
- 平等選挙 1人1票
普通選挙の歩み
かつて日本では「直接国税 15 円以上を納める 25 歳以上の男子」のみが投票できる制限選挙でした。 1945 年に男女ともに選挙権が認められ、2016 年に 18 歳以上に引き下げられました(それ以前は 20 歳以上)。
公職選挙法の身近なルール
- 選挙運動を手伝った人に 缶のお茶を渡す → アウト(金品授受の禁止)
- 翌日に 18 歳になる人 → 投票できる(「満」は翌日まで含む)
- 外国に住む日本人 → 国政選挙のみ大使館等で投票可(地方選挙は不可)
- 得票数が並んだら → くじ引きで当選者を決める
- 候補者本人ではなく親族・関係者が違反 → 連座制で当選無効(本人は逮捕されないが議席を失う)
- ネット選挙運動の演説動画を プリントアウトして友達に配布 → アウト(ポスター・ビラの枚数制限を超えるため)
3 つの選挙制度の長所と短所
選挙制度比較
- 小選挙区制
- 1 区から 1 人当選。人気政党が通りやすく 二大政党制(米英)になりやすい。長所:政治が動きやすい。短所:死票が多い・一票の格差が生まれる。
- 大選挙区制
- 1 区から複数人当選。死票は減るが、選挙区が大きくなり選挙運動コストが上がる。
- 比例代表制
- ドント式で得票数に応じて議席配分。少数政党も当選しやすい。長所:一票の格差が小さく、多様な意見が反映される。短所:多党制で過半数を取る政党が出にくく、政局が不安定になりやすい。
日本はこの 3 つを組み合わせています。衆議院は小選挙区比例代表並立制、参議院は大選挙区+比例代表(並立とは言わない)。
違いの肝は 重複立候補の可否:衆議院は小選挙区と比例代表の 両方に立候補可能(重複立候補)。比例で復活当選する例があります。参議院は片方のみで重複不可。
比例代表 ── 拘束名簿式と非拘束名簿式
2 つの名簿方式
- 拘束名簿式(衆議院)
- 政党があらかじめ 順位を決めた名簿を提出。有権者は 政党名で投票する。同順位なら惜敗率で順位が決まる。
- 非拘束名簿式(参議院)
- 政党は順位を決めない。有権者は 政党名でも候補者名でも投票できる。候補者名で多く票を得た人から当選する。
一票の格差
地方の選挙区では 99 票で落選、別の区では 10 票で当選—— といった現象が起こることがあります。 これが 一票の格差 です。原則「1 人 1 票」のはずなのに、選挙区の人口バランスが偏ると 1 票の重みが変わってしまうのです。
比例代表のみなら一票の格差は生まれません。しかし全部を比例代表にすると 多党制で政局不安定になるリスクがあるため、現在のような複合制度になっています。
ドント式の計算
比例代表の議席は ドント式 で配分します。 各政党の得票数を ÷1、÷2、÷3 … と計算していき、商の大きい順に定数まで議席を割り当てます。
例:A 党 1,500 / B 党 900 / C 党 600 / 定数 5
A:1500・750・500 / B:900・450・300 / C:600・300・200 → 大きい順に「1500, 900, 750, 600, 500」を選ぶ → A 党 3、B 党 1、C 党 1。
この講のおさえどころ
- 選挙に関する日本の法律は?公職選挙法
- 選挙の四原則は?普通/直接/秘密/平等
- 投票年齢が 18 歳に引き下げられたのは何年?2016 年
- 関係者の違反で当選が無効になる制度は?連座制
- 衆議院の選挙制度は?小選挙区比例代表並立制(重複立候補可)
- 比例代表の議席配分方法は?ドント式
- 参議院の比例代表で有権者が書ける票は?政党名 または 候補者名
考えを深めるための論点
「一票の格差」を完全に解消するため、すべての選挙を比例代表のみにすべきでしょうか?
メリットは 一票の格差ゼロ/多様な意見の反映/死票減少。 デメリットは 過半数を超える政党が出ず、何も決まらなくなる「政局不安定」。 たとえば「2 万円配る政党/消費税 0% 政党/消費税 5% 政党」が並立して過半数が取れず、結局どの政策も実行されない、というケースが起こり得ます。 現在の組み合わせ制度は 「格差の許容」と「決定の機動性」のバランスを取った折衷案だと言えます。