非公開試作版 / 政治編 14「選挙」
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第 2 部 / 政治編

選挙公職選挙法/四原則/三制度/一票の格差/ドント式

講義動画

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出典:市来公平 先生/TR-021「選挙」(20:53)

この講で説明できるようになるギモン

選挙のルールは「1つの法律」に集約

日本で選挙に関するルールをまとめている法律は、ただ 1 つ 公職選挙法 です。 投票年齢・被選挙権・ポスター枚数・SNS の扱い—— すべてこの法律に書かれています。

日本国憲法に書かれている 選挙の規定は第 15 条のみで、内容は 「成年者による普通選挙を保障する」だけです。 具体的な年齢や手続きは公職選挙法にあります。

選挙の四原則

4 つの原則

  • 普通選挙 性別・納税で差別しない
  • 直接選挙 本人が投票する
  • 秘密選挙 誰に入れたかは秘密
  • 平等選挙 1人1票

普通選挙の歩み

かつて日本では「直接国税 15 円以上を納める 25 歳以上の男子」のみが投票できる制限選挙でした。 1945 年に男女ともに選挙権が認められ、2016 年に 18 歳以上に引き下げられました(それ以前は 20 歳以上)。

公職選挙法の身近なルール

3 つの選挙制度の長所と短所

選挙制度比較

小選挙区制
1 区から 1 人当選。人気政党が通りやすく 二大政党制(米英)になりやすい。長所:政治が動きやすい。短所:死票が多い一票の格差が生まれる。
大選挙区制
1 区から複数人当選。死票は減るが、選挙区が大きくなり選挙運動コストが上がる。
比例代表制
ドント式で得票数に応じて議席配分。少数政党も当選しやすい。長所:一票の格差が小さく、多様な意見が反映される。短所:多党制で過半数を取る政党が出にくく、政局が不安定になりやすい。

日本はこの 3 つを組み合わせています。衆議院は小選挙区比例代表並立制参議院は大選挙区+比例代表(並立とは言わない)。

違いの肝は 重複立候補の可否:衆議院は小選挙区と比例代表の 両方に立候補可能(重複立候補)。比例で復活当選する例があります。参議院は片方のみで重複不可。

比例代表 ── 拘束名簿式と非拘束名簿式

2 つの名簿方式

拘束名簿式(衆議院)
政党があらかじめ 順位を決めた名簿を提出。有権者は 政党名で投票する。同順位なら惜敗率で順位が決まる。
非拘束名簿式(参議院)
政党は順位を決めない。有権者は 政党名でも候補者名でも投票できる。候補者名で多く票を得た人から当選する。

一票の格差

地方の選挙区では 99 票で落選、別の区では 10 票で当選—— といった現象が起こることがあります。 これが 一票の格差 です。原則「1 人 1 票」のはずなのに、選挙区の人口バランスが偏ると 1 票の重みが変わってしまうのです。

比例代表のみなら一票の格差は生まれません。しかし全部を比例代表にすると 多党制で政局不安定になるリスクがあるため、現在のような複合制度になっています。

ドント式の計算

比例代表の議席は ドント式 で配分します。 各政党の得票数を ÷1、÷2、÷3 … と計算していき、商の大きい順に定数まで議席を割り当てます。

例:A 党 1,500 / B 党 900 / C 党 600 / 定数 5
A:1500・750・500 / B:900・450・300 / C:600・300・200 → 大きい順に「1500, 900, 750, 600, 500」を選ぶ → A 党 3、B 党 1、C 党 1。

この講のおさえどころ

考えを深めるための論点

「一票の格差」を完全に解消するため、すべての選挙を比例代表のみにすべきでしょうか?

メリットは 一票の格差ゼロ/多様な意見の反映/死票減少。 デメリットは 過半数を超える政党が出ず、何も決まらなくなる「政局不安定」。 たとえば「2 万円配る政党/消費税 0% 政党/消費税 5% 政党」が並立して過半数が取れず、結局どの政策も実行されない、というケースが起こり得ます。 現在の組み合わせ制度は 「格差の許容」と「決定の機動性」のバランスを取った折衷案だと言えます。